モーターサイクリスト 1976/10より

■ナナハンと互角の高速性能

 トップギアで9,000rpmをオーバーし、スピードメーターは120mph(193km/h)をマーク!もちろん前屈姿勢をとってのことだが、このスピードは750クラスでさえ容易には出ない。

 テストの舞台は、右回り4.3kmの富士スピードウエイ・ショートコースである。第1コーナーは2速ギアまで急激にシフトダウン。ブレーキの効き味は、リヤがやや早期ロックぎみではあるが、フロントは小気味のいい効きを示してくれる。

 下り坂の第1コーナーはソロソロと回り、すぐにスロットル全開。加速はすばらしく、3速でも4速でもメーター指針はすぐにレッドゾーン(9,000rpmから)へはいる。左260Rでは5速全開!もう160から170km/hのスピードだ。フレームがゆるやかにたわむ感じとか、後輪がわずかに滑っているのがわかる。

 続く右100Rは1速落として回りそのままスロットルを開けていくとヘアピンコーナーである。2速ギアまで落とすと同時に前後ブレーキを力いっぱいかける。リヤを少し強くかけすぎたせいか、リヤホイールは上下に激しくホッピングを起こした。

 ヘアピンを立ち上がって右300Rへかかるころは、もう5速ギアでフル加速中―といった忙しさ。ここではフレームのよじれと横風によるヨーイングが発生する。しかしその動きは緩慢なものであり、スロットルは開けっぱなしでも不安がない。最終コーナーの右150Rは、4速で回り、立ち上がったらすぐ5速に入れピッタリ伏せる。第1コーナーが近づくころはまたもや9,000rpmオーバー/120mph・・・。この高速でも直進安定性は文句なしに良く、片手離しでも不安はない。振動の少なさも4気筒ならではのものだった。

 以上が1周4.3kmのサーキットインプレッションだ。私のタイムは知らないが、アメリカの”CYCLE”誌のクック・ネルソン氏は、1分50秒で回っていた。平均時速140km/hである!。

 コーナリングの感じは、ピッタリと路面に吸いつくようなロードホールディングのよさが印象に残った。

 タイヤはダンロップで、サイズはフロント3.25H19、リヤ4.00H18。900のZ1と同じものである。このタイヤとサスペンションのマッチングは、ホンダCB550のようなしっとりした乗車感を生み出している。

■日本人向きのスーパーバイク

 エンジンのスタートはセル及びキックである。セルスターターには”スターターロックアウトシステム”が付いている。これはクラッチを切らないとセルが回らない、という安全のための機構である。

 排気音はアメリカのCHP規格で78dB(A)以下という静かなもの。逆にエンジンのメカニカルノイズが大きめに感じられるほどである。

 変速機は5段リターン式。各ギアで9,000rpm時のスピードは1速から70、105、130、162、192(各km/h)となる。実際には9,500rpmは楽に回ってしまうのて、各ギアの最高速度は5〜10km/h上となる。

 この変速機はZ750TWINと同じものだが、KZ650のパワーバンドはかなり広いため、ギアのつながりは良好。トップギアの加速力にも不満はない。むしろ、トップギアの上にさらにもう1段欲しいほどである。6段変速とすれば、それこそ200km/hを超すスピードが可能だろう。

 さて、高速性能は文句なしだったが、低中速には若干の問題があるようだ。一定速度で走行するだけならトップギアで30km/hでもスムーズだが、スロットルを急激に開けると息つきを起こし、一時的にエンスト状態になる。この現象は3,000でも5,000rpmでも発生。キャブレターのセッティングの関係だと思うが、日本国内へ市販するまでには改善して欲しいところである。

 ライディング・ポジションほ、大柄なアメリカ人には向かないのではと思われるほど、私にはピッタリだった。シ−ト高もたぶん800mmを超していないはずだ。シートが2段式(ピリオンライダーがすわる部分が少し高い)で、急加速にもシリはズレないし、停止時に足もつきやすい。

■均整のとれたスタイル

 横からこのKZ650を眺めると、全体にバランスのとれたスタイルであることに気づく。これまでのカワサキ900と750のFourは、やや胴長で車体の前半分が寸づまりの印象を受けるものだったが、KZ650にはその難点がない。それは、KZのキャスターアングルが、前記2車の64°とは違い63°になっているからである。フロントフォークが1°だけネていること、さらに軸距が80mm短いことが、900や750のFourよりひと回り小さく、しかもまとまりのよいスタイルを生んでいるのだろう。

 そして、トレールは108mm。900/750 Fourの93mmよりも大きく、キャスターと合わせて、高速での直進安定性を狙ったことがわかる。だからといってハンドリングは重すぎることはない。これは車重が211kgと、Z750 Fourに比べれば25kgも軽いことに助けられているからである。身のこなしが軽く、低速での∪ターンなどハンドリングはすなおだ。

 今回の試乗車はアメリカ向けの輸出仕様だった。国内用の発売時期、価格は未定である。国内用は最高速度を180km/hに抑える”速度制御装置”が取り付けられることになっているのが残念ではある。しかし、日本国内ては750クラス以上に扱いやすく楽しめる車であることは間違いない。この車の開発目標が「750並の性能をもち、小さくてコントロールしやすい車」なのだから。そしてその目標は十分達せられている、といってよい。

(本誌・大光明)

※Zapperの心臓

「KZ650の歴史は1971年4月にはじまった」と、川崎重工の英文ニュース・リリースは書き出している。その春、カワサキは「スーパーバイクの王者」Z1を発売した。

 KZ650の開発プロジェクトは、Z1を仕上げたばかりのチーム―製品企画の種ガ島、工ンジン設計の稲村両氏を中心にしたスタッフ-でスタートした。

 入念な市場調査の結果得た目標は明確だった。H1、H2(500、750の3気筒)で築きあげたZapper(ザッパー:アメリカ俗語て”鉄砲玉”<つまり、めったやたらに速い、といった感じ>)的な血統を引き継ぐマシンを、Z1の流れをくむメカニズムを使って造りあげよう―。

 Z1と同じ、DOHC並列4気筒工ンジンには、652ccの排気量が与えられた。より小さく、軽く―というコンセプトにそってまとめられたパワーユニットは、ベンチテスト開始後わずか2時間で、目標出力をクリアーするという、すぐれた”素性”を示した。

 外から見たところ、KZ650のエンジンは、Z900(またはZ750フォア)の単なるスケール・ダウン版のようだ。しかし、内容的には、多くの相違が見られる。

 もっとも大きな違いは、一体鍛造タイプのクランク軸を採用したことだ。したがって、もちろん、各軸受けは、平軸受である。Z1の組み立てクランク+ローラー軸受から180°変針は、騒音減少を最大の理由として行われた。

 こうした狙いは、他の部分にも及んでいる。たとえば、バルブ隙間調整シムをリフターの下側(つまりバルブ側)に変えたこと、クランク軸からのパワー取り出しをハイボ・チェーンで行っていること、などがその代表例てあり、その他クラッチ・ダンパーや、吸・排気系のデザインにも、細かい配慮が見られる。

 ま横から見たKZ650のエンジンは、Z750のそれと、そっくりである。10°の前傾角をもつシリンダーには、やや角ばった合計12枚(シリンダー7、シリンダーヘッド5)の冷却フィンが切られている。クランク軸右端(乗車状態で。以下同じ)にセットされた2組のポイントと、左端のアーマチュアをアレン・ヘッドボルトでカバーに止めたACG、そして、セルモーターの位置、クラッチ・レリーズ機構(とその調整フタ)など、外から見える部分のレイアウトは、”Z1流”をそっくり踏襲している。

 しかし、細かく観察すると、外からでも、幾つかの明らかな相違を発見できる。まず目につくのは、DOHCのレリーフをもつ角ばったカム軸カバー。Z1系の丸っこい感じのものに比べると、いかにもDOHCらしい迫力をかもしだしている。カム軸支持は、Z1系の1−2気筒間2、3−4気筒閻2(計4箇所)という変則的なものから、カム軸両端に軸受をもつ、ノーマルなタイプに変わった。バルブはさみ角60度。バルブ・サイズは吸33、排28(各mm)。

 バルブ・タイミングは、吸開22°/閉52°、排開60°/閉20°(オーバーラップ42°)。進角特性は、10°BTDC/1,600rpm−35°BTDC/3,200rpm。

 圧縮比こそZ1系より高い(9.5)が、他の面では、ややマイルドなチューニングをほどこしている。そして、それが5,000rpmあたりから赤印回転域プラス(9,500rpm)に至るまでのパワーを生みだしえた理由でもあろう。64ps/8,500rpmという、リッター100馬力に迫る高出力を誇るKZ650の”心臓”は、まさに、H1、H2の伝統を引き継ぐ”超スプリンター”―ザッパーにふさわしい瞬発力と、Z1ゆずりの長距離高速ツアーにも耐えるスタミナを秘めているようだ。

※Z750と共用のギア・ボックス

 さて、1インチ幅のハイボ・チエーンで、クランク軸中央から取り出された出力は、クランク軸後下方に位置したセカンダリ・シャフトに入る。セカンダリ・シャフトは、上下割りクランク・ケースの”アンダー”側にセットされており、ボール・ベアリングによって支持されている。ギア・ボックスヘの出力伝達は、セカンダリ・シャフトギア(右端の平歯車)/クラッチ・ハウジング・ギアヘと行われている。セカンダリ・シャフトにはまた、スタータ−・モーター・クラッチが組み込まれている。このレイアウトは、クランク・ケースを割らすにクラッチ・ハウジングを外せるという整備性の面での利点をうんでいる。

 5組の”オール・インダイレクト”ギアをもつギア・ボックスは、Z750ツインとまったく同じ。部品の共用(標準)化を一歩おし進めている。このあたりは、ホットな”ザッパー”としてはいささか手堅すぎるとも思われる(しかし、将来のモーターサイクルに必要な合理的な)手法であり、またそれは、KZ650がもつ、”もうひとつの側面”をも示している。

※4IN2排気系

 フレームは、Z1用を小ぶりにしたようなパイプ・ダブルクレードル・タイプ。ホイールベースは80mm短い。サスペンション・ストロークは前140後80mmとZ1と同じ値をとっているが、油量を多くし、減衰力低下をふせいでいる。とくにリヤ・ダンパー外筒径は、32→36mm径へと大幅にサイズアップされ、過酷な走行に備えている。

 前輪アライメントはキャスター角を63°とややシャープに、トレールは108mmと大きめにセットされている。

 47/53という前後輪重量配分とともに、高い直進安定性と、軽快な操縦性を兼ねそなえた特性のポイントになっている。

 ブレーキは、Z750と同タイプの前輪ディスク(ローター有効径245mm)、180×40のLTドラムを後輪に配している。ホイールはオーソドックスな鋳鉄スポーク・タイプ。タイヤは前輪にスミトモ・ダンロップF6B、後輪K86MKIIM(いずれもH規格)を配し、120mph(約192km/h)走行を保証している。

 排気系は1-2、3-4気筒をそれぞれ束ねた、いわゆる4IN2タイプ。消音器直前のクランクケース下方には、束ねられた左右の排気管を連絡する、クロスオーバー・パイプが設けられている。

 この他、クラッチを切らなければスターター・モーターが回らないスターター・ロックアウト機構など、安全装備のレベルも高い。

(いわた・げん)

 ■KAWASAKI KZ650

★エンジン 4サイクルDOHC並列4気筒空冷 ボア・ストローク62×54mm

総排気量652cc 圧縮比9.5 点火方式バッテリー/コイル 気化器ミクニVM24SS

潤滑ウェットサンプ 点火プラグNGK B8ES、ND 24ES ■始動キック及びセル

★性能 最大出力64ps/8,500rpm 最大トルク5.8kg-m/7,000rpm O〜400m加速12.4秒 最小回転半径2.4m

★変速機 5段リターン式 変速比 1速から2.333 1.631 1.272 1.040 0.888

2次減速比2.625(42/16) 総減速比5.950(5速ギア)

★寸法・重量 全長2,170 全幅850 全高l,145 軸距1,420 最低地上高145(各mm) 乾燥重量211kg キャスター63° トレール108mm タイヤ 前3.25H19 後ろ4.00H18

★容量 燃料タンク16.8L オイル3.5L