Mr.Bike 1976年10月号 「今月の試乗 カワサキ KZ 650」より

ライダー 石井 昭博

 カワサキ自慢の新しい650"KZ650"がわが日本をさしおいて、アメリカ・ヨーロッパを中心とした輸出版としてひと足先に発表された。

 とはいっても、このKZ650、輸出専用というわけではなく、運輸省の"認定待ち"ということで、早ければ年内にも国内発表されるということだから今はその海外仕様・KZ650のファースト・インプレッションを中心にここではお伝えしたい。

 とはいっても、海外も国内用も外観・性能的にまったく<差>はなく、僅かにメーターが"マイル表示"ということぐらいの違いになるはずである。

 試乗コースは高速サーキットとしてあまりにも有名な"フィスコ(富士スピードウェイ)"を使って行われたため、しかも残念ながら、短時間であったためとても普通のインプレのようにはいかなかったので、ここでは"高速域"を中心としたごく大ざっぱな印象しかお伝えできないことをまずお断りしておく。

 エンジンはKZ900(輸出専用モデル)/Z750Fで、すでに定評の4サイクル並列4気筒のDOHC―となれば、あきらかに"速そう"という感じが試乗前から想像できるが、事実この予想はまったく当たっていた。

 それにしても、よく回るエンジンである。9000rpmから始まるタコメーターのレッドゾーンを時としてオーバー。フルスケールの12000rpm付近まで回しても、4サイクル特有の頭打ちもなく、バルブ・ジャンピングもなく、メーターを振り切ってしまう勢いだ。

 このあたりの性能はさすがにDOHCマルチの威力十分というところ。

 ミッションのレシオも適切でシフト・ダウン/アップの見せ所である富士のヘアピンでもまったく快調。適当にエンブレをかけながらのアウト・イン・アウト走法は楽しかった。

 取り回しも最高。KZ650の性能にうまくマッチングしている感じで、変にその重量に振りまわされることもなく、ひどく日本的だ。

 "750の性能/650の扱い易さ"のキャッチ・フレーズどおりだろう。

 エンジンの性能にしても単なる馬力・トルクの向上だけでなく、そこに付随する機械騒音、排気騒音への対策にもかなり積極的に"力"を入れた結果か、たしかに<速いし>、<静か>なビッグ・バイクといえる。

 パワー・トルクも、750並の64PS/8500rpm、5.8m-kg/7000rpmを獲得している高性能ぶりだ。

 エンジンも外観的にはKZ900/Z750Fと同形式だが内部的にはかなりの違いがある。

 それを簡単にピックアップすると―。カッコ内はZ750F

*クランク/一体式(組立式)
*クランク・シャフトの軸受/平軸受・プレーンベアリング(コロ軸受・ニードルローラーベアリング)
*パワー取り出し/クランクセンターからのハイボ・プライマリーチェーン(3・4気筒間からのスパー・ギヤで直接クラッチへ)
*カムシャフト/バルブシムがバルブリフターの内側(バルブリフターの外側)

 ―といったように、主要部分の構成には大きな違いが見られるが、これはKZ650のパワーユニットをいかにコンパクトにするかを考えたための結果。

 このほか、クラッチハウジングにはクラッチノイズとショックを減少するため、ゴムのダンパーを使用している。

 排気ガス対策についてはPCVシステムを採用。これはブローバイガスを"リサイクル"することにより排ガス中のハイドロカーボンを40%減少するというメカだ。ガソリンはもちろん無鉛使用で、バルブシートは超鋼合金で磨耗しにくい材質。

 こうしてみると、このKZ650は"4気筒"としてかなりのまとまり。エンジンの信頼度も高いと考えてよさそうだ。

 パワーに対するフレーム剛性も"ダブル・クレードル"の使用で万全。

 全体のフィーリングもホンダのCB550の持つ4気筒の味とはまったく違っていて、いかにもカワサキ的な"野性味"を秘めた―そんな気がする。

 スタイル的に、KZ900/Z750Fと非常に接近していることも、そんな野性味を感じさせる原因かもしれない。

 ライディング・ポジションも同様で、KZ900/Z750Fのそれと似ている。

 ただマフラーはいわゆるノーマル排気ではなく、ブームの集合排気。ただ、デザイン上のシンメトリーと重量配分のバランスから、クロスオーバーパイプを持った4/2式。

 このため、左右のバンク角も均一で、集合排気に見られる左右のバンク角のバラツキもないのでコーナーリングも安心だ。

 安全対策にも当然神経が配られているが、そのあらわれのひとつが"スターター・ロック・アウトシステム"。

 これはギヤが入っている状態では"セルが回らない"メカでこの場合、クラッチを完全に切らないと始動しないので、セルを回したらギヤが入っていて、"突然飛びだした"ということを防止している。

 タイヤもKZ900と同じ住友ダンロップが採用されて、その性能は"保証済み"だろう。

 チェーンも新開発のリング入りで、クッションハブを採り入れ伸びの防止と耐久性が向上。

 サスペンションも新たに開発したという"カヤバ製"の新型で、特に高速でのロードホールディングには力を入れているとあって、フィスコの試乗でもまったく安定した性能を見せてくれた。

 いずれにせよこの新しいロクハンはこのクラス唯一の4気筒バイクとして、スプリンターとしてもロングツアラーとしても十分の性能を発揮する"日本的"モデルといえそうだ。

 カラーリングはキャンディエメラルドグリーンとキャンディスーパーレッドの2種類でこのあたりもKZ900/Z750Fのムードである。